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シューマッハーとモンツァの夕暮れ
 イタリアGPはいつも特別なレースです。今年は、ミハエル・シューマッハーがそこで90勝目のF1GP優勝を飾るとともに、シーズン限りの引退を表明して特別感を高めてくれました。表彰式を終えたモンツァ・サーキットは、エモーショナルな空気が満ちていました。

 モンツァを初めて訪れたのは1986年。それまで、フジスピードウェイで1976年から2年間行なわれた日本GPと、親戚のいるロサンゼルス近郊のロングビーチやラスベガスのアメリカGPだけしか見たことがなかった私は、本場ヨーロッパの、モナコと並ぶ伝統のイタリアGPに大きな期待を持って出かけました。

 しかし公園の中に横たわるモンツァは、勢い込んで乗り込んだこちらの期待とは裏腹に、簡単には本場を感じさせてくれませんでした。F1GPの深さを感じられたのは、レースが終りモンツァの森を夕闇がうっすらと被い始めた午後8時過ぎ。そこで“本場”を感じさせてくれる小さな出来事に出会いました。

 おばあちゃんが5歳くらいの孫娘の手を引いてホンダのモーターホームを訪ねてステッカーを所望しました。ホンダ・マンがステッカーと帽子を渡すと、ていねいに御礼を言って去っていきます。

 よかったねぇとでも言うように曲がった腰をもっとかがめて孫娘の顔を覗き込んでいたおばあちゃんが、こちらを振り返って孫娘の頭を軽く押し下げました。孫娘の“グラッツェ”というか細い声がとてもきれいにモンツァの夕暮れに吸い込まれたのです。こんなところにF1グランプリの深さがあったことに気付かされ、呆然と夕闇の中に消えていく二人の後姿を見つめたのでした。

 シューマッハー最後の日本のレースとなる10月8日、20年目の鈴鹿サーキットではどんな光景が見られるのでしょうか。

2006年 9月21日 [F1をひろめよう通信WELL!]編集責任者 山口正己

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