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F1ドライバーのトレーニング

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 クルマを運転するだけなのに、なぜモーター「スポーツ」なんていうのだろう? 市販車で公道を走るだけの我々には、それを正しく理解することは簡単ではない。しかし遊園地でジェットコースターに乗ったときのことを思い描いてみてほしい。右に左に、前に後ろに、上に下に。次々と身体が振り回され、身体を固定するバーを握るだけで精一杯になる。全身に力を込め、硬直させて揺さぶりに耐えようとする。

 F1ドライバーが走行中に受けるこの揺さぶり、いわゆる「G」は、その何倍もの力だ。市販車で急ブレーキをかけても1Gにも到達しないが、F1では5Gにもなる。たった2秒で時速300kmから停止してしまうのだから、当然だ。しかもコクピットの中はサウナ並みの50度以上の高温。いかに過酷な運動を強いる「スポーツ」か、おわかりいただけただろうか?

 さて、そんなスポーツに携わるからこそ、F1ドライバーは健康に非常に気を遣っている。日々の生活習慣や食事はもちろん、身体を鍛えるトレーニングも、チーム専属ドクターや個人トレーナーの指導の下、科学的な検証に基づいてプログラムが組まれている。

 08_I4V2223.jpg F1のスピードに適応するための基礎的な肉体作りは、基本的にオフシーズンの間に行なわれる。腕の筋力、脚力、首の筋肉、腹筋、背筋、反射神経、そしてスタミナ。過酷なGを受けながらも、繊細にハンドルやペダルをコントロールするためには身体の至る所に筋肉が必要となる。ちなみに、ブレーキペダルは30kg以上の力で踏むというだけでも驚きだが、その力を32、28、25といったように微妙に変化させるという芸当までできなければならないというのだから、とても素人に真似のできるものではない。

 F1マシンを運転するのに、筋力が必要なのは当然だ。しかし、余計な筋肉は要らない。むしろそれは身体にかかるGを増長する「おもり」でしかないのだ。だからF1ドライバーは本当にドライビングに必要な筋力だけを鍛える。それも専属トレーナーの存在無くしてはできないことだ。

 スタミナは一般的なスポーツと同様に、重要な項目のひとつだ。1レースで2リットルも発汗し体力を消耗するF1では、スタミナが不足すると頭脳が正常に機能することもできなくなる。判断力の低下は、瞬時の対応が要求される音速の世界において、致命的だ。どのドライバーも基礎的な肉体作りはオフの間に終えておき、シーズン中はこのスタミナ維持を中心としたランニングなどのメニューをこなしている。

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 過酷なトレーニングだからこそ、「遊びの要素を採り入れて、楽しみながらやることも大切」なのだと、どのトレーナーも口を揃える。マウンテンバイクやテニス、サッカーなど、自分の趣味としてのスポーツをトレーニングメニューに組み入れているドライバーも少なくない。オフにはチームが「合宿」を行ない、寒いヨーロッパを飛び出して南の島でスイミングやカヤッキングなどを採り入れたプログラムを組む。マレーシアGPやバーレーンGPの前後には、タイやドバイのリゾート地でバカンスを兼ねたトレーニングを行なうドライバーも多い(今年は友人同士のハミルトンとスーティルがタイへ)。

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 チームによってはファクトリーに専用のトレーニングルームを用意し、最新鋭の機材を取りそろえている。なるべく本来のドライビングに近い状況を再現しようと、コクピットと「重い」ハンドルをセットにした専用トレーニング器具まである。

 しかしどのドライバーも同じように言う。トレーニングをするなら、F1マシンをドライブしているのがいちばんだよ、と。F1マシンのドライビングに必要な肉体を効率的に鍛えるためには、F1マシンをドライブするのが良いに決まっている。そう言われてみれば、その通りだ。彼らはF1が好きでF1に乗っている。F1に乗っているからこそ、彼らはいつも健康でいられるのだろう。

(text by You NAGASE / photographs by Renault, McLaren)

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