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名車がアートになる博物館

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 ミラノから電車で2時間、モデナの街からさらにバスに揺られること30分。ようやくたどり着いた小さな田舎町マラネロが、フェラーリの本拠地だ。「フェラーリ正門前」でバスを降りて、本社正門の向かいの小道を5分ほど歩いていくと、いかにもイタリアンアートといった建築物が目に入る。この「ガレリア・フェラーリ」はF1マシンを始めとするフェラーリの名車が展示されている、いわゆる博物館なのだが、その佇まいはむしろ美術館と言った方が正しい。

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 白を基調にした空間に、オブジェのようにF1マシン、エンジンが並ぶ。美しさにこだわるイタリアらしく、マシンをアートととらえ、デザインの隅々まで芸術として高めようという繊細さが感じられる。 そしてそれはクルマに対するフェラーリの信念そのもののようだ。年間20万人が訪れるというこの“美術館”には、そんな雰囲気が漂っている。

 このようなミュージアムは、メルセデスにも、BMWにも、ルノーにも、そしてトヨタやホンダにもある。 シュツットガルトのメルセデスベンツ・ミュージアム、ミュンヘンのBMWミュージアム、そしてパリのシャンゼリゼにはアトリエ・ルノーがある。日本にはトヨタ博物館、ホンダ・コレクションホールがある。いずれもF1や自動車の歴史と文化を大切にした、素晴らしい施設ばかりだ。そしてそれぞれの博物館に、それぞれのメーカーの哲学や信念が表われている。

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 自動車メーカーではないが、ウイリアムズF1チームも、自社ファクトリー敷地内に立派な博物館「カンファレンスセンター」を構えている。「ウイリアムズGPコレクション」コーナーには、いくつものタイトルを獲得したチームの歴代マシンが、ビジュアルパネルとともにアーティスティックな空間に並んでいる。時にはF1レース日にファンを迎えて、マシンを眺めるとともにレース中継観戦イベントなども催している。これはこれで、モータースポーツ発祥の地イギリスならではの「アート」の楽しみ方なのかもしれない。

 イベントブースや空港など、様々なパブリックスペースに展示されるF1マシンは、そのほとんどが展示用のマシンであり、デリケートなメカニズムは取り除かれている(上記のウイリアムズのサイトでは、その展示用マシン制作の様子も見ることができる)。場合によってはボディだけが本物、時にはすべてが展示用のレプリカという場合もある。それもある意味では、「アート」作品のひとつなのかもしれない。しかし前出のフェラーリやウイリアムズ、ホンダなどのミュージアムに展示されているのは、今でも走る状態で整備され続けているマシンばかりだ。それ故に、どこかのイベントへ走行に持ち出されていたり、ヒストリックカーレースに出場していたりといった理由で、展示の内容が入れ替わることもしばしば。しかし、時に「走る芸術品」と形容されるF1マシンだが、 今も現役で走るからこそ芸術品、というのもまた事実なのかもしれない。

(text by You NAGASE / photographs by Ferrari, Williams, Toyota)

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