フェラーリF1チームの胃袋を支える
マラネロの「おいしいピットストップ」
フェラーリ御用達のレストランといえば、
マラネロの本社向かいにある「リストランテ・キャバリーノ」が有名だが、居心地の良さを感じさせつつも、ちょっとシックな雰囲気のキャバリーノはどちらかというと「ご接待用」。一方、そこからクルマで僅か5分、フィオラノのテストコース近くにあるもう一軒のレストラン「モンターナ」はドライバーを含めたチームスタッフが毎日のように通う、アットホームな雰囲気の名店だ。
モンターナ(イタリア語で「山」の意)という名前のとおり、山小屋風の外観で木をふんだんに使った内装も家庭のダイニングのような雰囲気。ただし、店内には往年の名ドライバーたちのヘルメットやレーシングスーツ、写真がそこかしこに飾られていて、この店がモータースポーツの歴史の中で大切な役割を果たしてきたことを物語る。
ちなみにフェラーリの本拠地、マラネロがあるのは、イタリア中部のエミリア・ロマーニャ州。
ボロニエーズソース発祥の地として知られる食の都、ボローニャを中心に、パルメザンチーズや生ハムで知られるパルマ、バルサミコ酢の産地モデナなど、イタリア料理に欠かせない食材の「聖地」を多く抱える土地柄だけに、モンターナのメニューも地元、エミリア・ロマーニャの伝統的な家庭料理が主体で、イタリアの典型的な「マンマ」(おかあさん)をそのまま絵にしたようなロゼッラおばさんが作るタリアテッレ・ボロニエーズはあのミハエル・シューマッハーの大好物。店内にはミハエルがロゼッラおばさんの手ほどきを受けながら、自分でボロニエーゼソースを作った時の写真も飾られている。
ちなみに筆者の個人的なお勧めは、地元モデナのバルサミコをたっぷりと
使った「豚の三枚肉のバルサミコ煮込み」トロリとした豚肉のうまみが熟成されたバルサミコの甘酸っぱさと相まって、絶妙のバランスを創り出す。モンターナの料理はどれもしっかりとした個性と力強さを持ちながら気取りがなく、胃袋と心に染みるイタリアの味だ。
8年前、フェラーリの取材でマラネロに4日ほど滞在したときには、毎晩のようにこのモンターナに通い、ロゼッラおばさんのメニューに舌鼓を打った。店のスタッフもみなフレンドリーで、飛び込みで入って運悪く満席だったときも「ちょっと待ってて、すぐに場所つくるから!」と奥にある「賄い用」のテーブルで食べさせてくれたりして、レストランの「客」というより家族の一員になったような気分。フェラーリのドライバーやチーム首脳が毎日のようにこのモンターナに通い、ロゼッラおばさんの料理で1日の疲れを癒すのも、あの味と圧倒的な居心地の良さを体験すれば納得である。そう、リストランテ・モンターナでのおいしい「ピットストップ」はフェラーリF1の隠れた原動力なのだ。
(text by Ken KAWAKITA / photographs by Mineoki YONEYA)





